<とってもむかしばなし>




むかしむかし、「なにか」がありました。
まっくろなまっくろな、なにもないところに、ひとつだけ「なにか」がありました。

「なにか」といったら「なにか」なのです。
「なにか」といったら、それ以上でもそれ以下でもありません。

「なにか」は、その場所に何もないのが、とても寂しくて仕方がありませんでした。
待てど暮らせど、別のものが現れることも無く、「なにか」だけでした。

寂しくて辛すぎて仕方が無くて、ついに「なにか」は動きました。

自分の体を少しだけ解いて、みっつにわけました。
そしておねがいをしました。


――うごきますよぉに!


すると、解いた三つの塊は、形を変えて、三人の姿になりました。



一人は、壮健な男性に
一人は、すらりとした女性に
一人は、幼い少女の姿に



「なにか」はうれしくてうれしくて、飛び跳ねてしまいました。


そして、「なにか」はその三人と毎日毎日楽しく遊ぶようになりました。
もちろん、「なにか」からうまれた三人は、「なにか」のことが大好きでした。

「なにか」のために、いろんなことをしてあげたい、楽しませてあげたい。
そう思うようになりました。




三人のうちの、壮健な男性はこういいました


この場所を、もっとしっかりさせるために、大地と海と空を作りましょう


三人のうちの、少女はこういいました


私たち以外の生き物をつくって、皆で楽しく暮らしましょう


三人のうちの、女性はこういいました。


あまりにも味気ないので、たくさんの木や花で彩りましょう






その話を聞いているだけで「なにか」はわくわくが止まりませんでした。

三人は一生懸命、自分たちの考えていることを実現させようとしますがうまくいきません。
そんな彼らを見て、「なにか」も手伝います。

「なにか」は体を少しずつ解いて、三人の言っていることを念じたり、考えたりしながら、つくりあげていきます
それを見ているうちに、三人も少しずつうまくできるようになっていきました。



そしてついに!!


壮大な大地に、青く美しい空と聳え立つ山々が生まれ


その大地にさまざまないのちが走り飛び生まれ死に立ち上がり座り


そして彼らを支えるように多くの樹や祝福するように花が咲き乱れました。


三人は喜んで、その場所にたちます。





しかし






その場所が作りあがったころには――――



「なにか」の姿は、ほとんど消えてしまっていたのです。



この場所……


    世界   は「なにか」の体で出来ているからです。


「なにか」はこの   世界   を作り上げるために、自分の体を全部使ってしまったのです。



三人は酷く悲しみ、今まで作ったものを「なにか」に返そうとしました。

けれど、うまくいきませんでした。


そして、ついに「なにか」は霧のようになって消えてしまったのです。



三人は、とても悲しんだ後、決意しました。

この世界を、もっとしっかりしっかりつくろう。
そして、全部「なにか」に渡そう。


そうすれば、きっと「なにか」は戻ってきてくれる



帰ってきてくれる















そして、ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと
ずっとずっとずっとずっとずっとずっと
ずっとずっとずっとずっとずっと
ずっとずっとずっとずっと
ずっとずっとずっと
ずっとずっと
ずっと
後になって






三人の知らない場所で




「なにか」は霧のようになった体をあつめて、ひとつの、からっぽになった存在で



この世界にもう一度、姿を現したのです











おもどり